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都市の様相論
Last Update: 2016.12.23


「都市の様相」とは、都市の全体的な在り方のことを指します。
都市の物理的な構成、音や風、におい、それらが醸し出す漠然とした雰囲気や佇まい、また都市が辿ってきた歴史や広い社会での位置づけなどをも含む、全体的な在り方を指しています。
そうした複合的な対象を記述し、分析するために、実際に街を歩いて様相を記録するという原初的な方法をベースに、以下のような研究を展開しています。

+ 経路歩行実験による研究
+ 100ninmap project
+ 居住地選択論
+ Walk & Write Method



◆経路歩行実験による研究

●概要
私は歩くのが好きで、修士の頃、鯖街道を日本海まで歩いたりしまなみ海道を四国まで歩いたりしました。そのとき、急に村から山に入って寂しくなる感じや、小さな峠を越えたら一面のみかん畑とその向こうにきらきら光る海が見えたときの感じなどが、とても印象に残っていました。人が街を歩いているときに何を感じているのだろうか、という漠然とした問いのもと、研究を始めました。つまり都市の様相の人による把握の仕方に関する研究です。

そのために、多くの人に実際に街を歩いてもらい、感じ取った様相を用紙に記入してもらう「経路歩行実験」を発想しました。
実際の実験ではのべ84人もの被験者に京都の街の3つのルートを歩いてもらい、多量のデータを取得しました。それにより、人が歩きながら何を感じているかという非常に捉え難いことを、グラフや言葉によって可視的かつ定量的に記述しました。この経路歩行実験〜定量的な記述、という一連の方法が本研究の最大の特長になると思います。
記述ができることで、分析が可能となります。本研究では都市構造、都市の歴史や人の記憶といった多様なものごとに照らしてデータを分析し、多様な知見を得ています。
自由記述を執拗に分析したのも特徴です。研究者側で指標を絞って、たとえばSD法などで定量評価をしてもらうのが環境心理学的研究の定番の研究方法ですが、その方法では絞った指標についてしか知見が得られません。言葉は、人間が世界を表現するためにつくりあげてきた最大のツールであるがゆえに、分析結果も豊穣なものになると考えています。

ただし様相という理論的枠組みも、得られた自由記述データも、なかなかに手強い相手です。分析は何度もやり直しており、今後もまた洗練させてゆきたいと考えています。私の研究のすべての出発点であり、かつライフワークとなりそうなテーマです。




●わかりやすいマテリアル
+ 概要ハンドアウト
+ 「研究の展覧会」vol.1のアーカイヴページ(記述方法の説明動画作品もあり)
+ 「デザイン学論考」vol.2 掲載記事(100ninmap projectも併せたまとめ)


●発表論文一覧
+ 学位論文
  • 北雄介:経路歩行実験に基づく都市の様相の分析とモデル化に関する研究,京都大学学位論文,2012.9.

+ 全文査読付論文
  • 北雄介・門内輝行:経路歩行実験による都市の様相の記述−都市の様相の解読とそのデザイン方法に関する研究(その1),日本建築学会計画系論文集, Vol.75・No.651,pp.1159-1168,2010.5.
  • 北雄介・門内輝行:様相因子による都市の様相の分析−都市の様相の解読とそのデザイン方法に関する研究(その2),日本建築学会計画系論文集, Vol.76・No.661,pp.625-634,2011.3.
  • 北雄介・門内輝行:エッジ、エリアの特性による都市の様相の分析−都市の様相の解読とそのデザイン方法に関する研究(その3),日本建築学会計画系論文集, Vol.76・No.666,pp.1433-1442,2011.8.
  • 北雄介・門内輝行:フレーム概念に基づく都市の様相の分析とモデル化−都市の様相の解読とそのデザイン方法に関する研究(その4),日本建築学会計画系論文集, Vol.79・No.696,pp.421-430,2014.2.

+ アブストラクト査読付論文
  • 北雄介・門内輝行:経路歩行実験による都市の様相の記述と分析,デザインシンポジウム2008 講演論文集,pp.373-378,2008.11.
  • 北雄介・門内輝行:自己組織化マップを用いた都市の様相の分析,Designシンポジウム2010 講演論文集,2010.11.
  • Yusuke Kita・Teruyuki Monnai:Description and Analysis of Urban Modality based on Walkthrough Experiment,EDRA42Chicago Conference Proceedings,pp.305-306,2011.5.
  • Yusuke Kita・Teruyuki Monnai:A Framework for Modeling Urban Modality,EDRA43Seattle Conference Proceedings,p.186,2012.6.
  • 北雄介・門内輝行:都市のデザインプロセスと様相との関連性の分析,Designシンポジウム2012 講演論文集,pp.407-414,2012.10.
  • 北雄介:都市歩行の研究に基づく「ありのままの認知」の研究方法に関する考察,日本認知科学会第33回大会発表論文集,pp.393-402,2016.9.

+ 査読なし論文
  • 北雄介・門内輝行:様相概念と実験方法−経路歩行実験による都市の様相の記述と分析(その1),日本建築学会学術講演梗概集E,pp.957-958,2008.8.
  • 南野友子・北雄介・門内輝行:マクロ・ミクロの様相記述手法−経路歩行実験による都市の様相の記述と分析(その2),日本建築学会学術講演梗概集E,pp.959-960,2008.8.
  • 石黒紘介・北雄介・門内輝行:記述に基づく様相の分析−経路歩行実験による都市の様相の記述と分析(その3),日本建築学会学術講演梗概集E,pp.961-962,2008.8.
  • 北雄介・門内輝行:エッジ、エリアの類型化−都市の様相の解読とそのデザイン方法に関する研究(その1),日本建築学会近畿支部研究報告集・計画系, Vol.50,pp.597-600,2010.6.
  • 平井慎一郎・北雄介・門内輝行:エッジ、エリアの記述指標とシークエンスの分析−都市の様相の解読とそのデザイン方法に関する研究(その2),日本建築学会近畿支部研究報告集・計画系, Vol.50,pp.601-604,2010.6.
  • 北雄介・門内輝行:エッジ、エリアの類型化−経路歩行実験による都市の様相の記述と分析(その4),日本建築学会学術講演梗概集E,pp.879-880,2010.9.
  • 平井慎一郎・北雄介・門内輝行:エッジ、エリアのシークエンスの分析−経路歩行実験による都市の様相の記述と分析(その5),日本建築学会学術講演梗概集E,pp.881-882,2010.9.
  • 加藤大騎・北雄介・門内輝行:エッジ、エリアの記述指標の分析−経路歩行実験による都市の様相の記述と分析(その6),日本建築学会学術講演梗概集E,pp.883-884,2010.9.
  • 北雄介・門内輝行:都市の様相把握モデルについての考察−都市の様相の解読とそのデザイン方法に関する研究(その3),日本建築学会近畿支部研究報告集・計画系, Vol.51,pp.549-552,2011.6.
  • 北雄介・門内輝行:道路構造と都市の様相との関連性についての考察−経路歩行実験による都市の様相の記述と分析(その7),日本建築学会学術講演梗概集E,pp.215-216,2011.8.
  • 酒谷粋将・北雄介・門内輝行:用途の配置と都市の様相との関連性についての考察−経路歩行実験による都市の様相の記述と分析(その8),日本建築学会学術講演梗概集E,pp.217-218,2011.8.
  • 北雄介・門内輝行:フレーム理論の導入とそれに基づく様相表現の基礎的分析−都市の様相の解読とそのデザイン方法に関する研究(その4),日本建築学会近畿支部研究報告集・計画系, Vol.52,pp.589-592,2012.6.




◆100ninmap project

●概要
日々街を歩く中で感じていることを、スマートフォンで自由に書いて位置情報とともに発信してもらい、それを集めてきて、言語処理して、みんなの「街の感じ方」を地図にしようという試みです。経路歩行実験を線から面に拡大し、また言葉の分析を楽にしたいと考えたところ、デザインスクールで情報系の荒牧先生らとの幸運な出会いがあり、実現することができました。
多くの自治体や研究者から感心を集めており、京都市内での街歩きイベントを3度開催した他、滋賀県大津商工会議所へのアプリ提供、静岡県焼津市でのオノマトペマップの作成などさまざまな都市へと展開をしています。これらを通じてデータを集め、言語分析を進めています。




●わかりやすいマテリアル
+ プロジェクトのホームページ
+ 「デザイン学論考」vol.2 掲載記事(様相論の研究も併せたまとめ)


●発表論文一覧
+ 全文査読付論文
  • 宮部真衣・北雄介・久保圭・荒牧英治:街歩きイベントを介した位置情報付きの様相記録収集の試み,情報処理学会誌論文集,Vol.56・No.1,pp.207-218,2015.1.

+ アブストラクト査読付論文
  • 宮部真衣・北雄介・久保圭・荒牧英治:街歩きで作り出す都市の様相地図−位置情報付きの様相記録収集の取り組み−,情報処理学会,グループウェアとネットワークサービスワークショップ2013(GN Workshop 2013)論文集,pp.1-8,2013.11.

+ 査読なし論文
  • 北雄介・宮部真衣・荒牧英治:集合知による街の感じ方の地図のデザイン−街歩きイベント「100人でつくる京都地図」を通じて−,都市計画報告集, No.12,pp.54-60,2013.9.
  • 宮部真衣・北雄介・久保圭・荒牧英治:マイクロブログから場所依存の様相記録を抽出する:"100ninmap"プロジェクトによる街歩きイベントの実施と応用,言語処理学会第20回年次大会発表論文集,pp.420-423,2014.3.
  • 北雄介・宮部真衣・荒牧英治:位置情報つき自由記述データを用いた都市の様相記述に関する考察−「経路歩行実験」と「100人でつくる京都地図」の比較を通して−,日本建築学会近畿支部研究報告集・計画系, No.54,pp.573-576,2014.6.




◆居住地選択論

●概要
私たちが家探しをするとき、家賃や広さ、駅徒歩などの不動産屋で提供される情報だけではなく、その地域や建物から感じられる雰囲気やイメージも重要な判断材料となっているのではないか。このような仮説のもと、様相論的な視点を居住地選択論へと展開する研究です。
100ninmap projectからの発展で、不動産ポータルHome'sを運営する株式会社ネクストさんとの共同研究です。宅建主任士としても、不動産の様相論は興味を持っていたところです。


●発表論文一覧
+ 全文査読付論文
  • 北雄介:居住地選択とその評価指標に関する様相論的分析,日本建築学会計画系論文集, Vol.82・No.732,2017.2.

+ 査読なし論文
  • 北雄介・清田陽司・宮部真衣・若宮翔子・荒牧英治:都市規模・地域類型ごとの居住地選好傾向とその要因の分析,日本建築学会近畿支部研究報告集・計画系,Vol.56,pp.493-496,2016.6.




◆Walk & Write Method

私は初めて訪れた都市では必ずバインダーに地図をはさんで歩き、通ったルートと感じたことを書き込んでいます(調査ログ内に一部アップ)。経路歩行実験の記録方法を応用した、感じ取った様相を忘れずに記録するための方法であり、また都市に没入でき、研究に関するアイディアも生まれます。100ninmap projectを進めていますが、私自身にはこのアナログな方法の方が合っているようです。
この方法をWalk & Write Methodと名づけ、デザインスクールでのワークショップ等にも導入しています。


Boston, 2014

コツと思うことをまとめておきます。

1.地図
  • 地図はなるべく事前に用意しておく。無理な場合は現地で観光地図などを入手してコピーするが、面倒。また海外のキンコーズなどでは地図のコピーを咎められることがあるので注意。
  • 基本はA4大。縦横は元地図次第でどちらでもOK。ただし、バインダーで挟む部分は余白としておく。
  • 白黒。できればスキャンして画像を加工するか、コピーの濃度を調整したりして、色を薄くする。
  • 適当な縮尺、適当な情報量の地図。インターネット上の地図は、どうも情報量がいまいち。海外都市では「地球の歩き方」がベストとなることが多い。

2.その他の装備
  • 赤いゲルインキペン。3色ゲルインキペンがあるとベター。
  • カバンは軽く、肩掛けまたはリュックで両手をフリーにする。
  • カメラは片手で操作できるコンパクトデジタルカメラがよい。一眼レフカメラやiPadなどはバインダーを持ちながら撮影するのは厳しいので、避ける。

3.初めての都市を効率的にわかるために
  • 性質の異なるいろいろなエリアを横断する。
  • 自分なりに都市の構造や歴史を思い浮かべる。
  • 事前に知りすぎず、概要を把握するに留める。現地で情報を収集し、また気になったことは歩いた後に調べる。その街の歴史博物館などを訪問するのもよい。
  • 地形に注意する。地形は地図ではわからないから、驚きをもたらしてくれる。